Special

クリエイター鼎談

第1回


ヴラッド・ガーファンクルについて

森:まずはキャラ全体のお話ですが、アフレコのとき、役者さんに監督として最初に説明したのは、ヴラッドはクール、ルークはワイルド、トウリュウは寡黙、ウェインは無邪気という簡単なものでした。あとの部分は役者さんにおまかせしていますし、脚本の段階で、セリフに性格が出ていると思いますので読めばわかる(笑)といいますか、いつもそうなんですが、くどい説明はしないようにしています。

丸戸:話が進んでいくとヘタレな部分が見えてくるのがヴラッドです。もともとヘタレなんですが、当初はそれに加えて傲慢という側面がありました。

矢野:女々しいキャラクターという面もありますよね(笑)。

丸戸:クールだったり傲慢だったりするのは、実のところ虚勢なのかなあ(笑)。書いているときは、キャラクターとして描くのか人間として描くのか――彼は人間じゃないんですが(笑)――どちらがいいか悩みましたね。僕はなにを書いていても後者に寄ってしまうというのと、世間にどう受け入れられるのかという部分がよくわかってなかったところがあったので。結局、基本的に自分の好きな方向になってしまいましたが(笑)。

森:それでいいんだと思いますよ。あまりお堅い性格ばかりですと話としても前に進まないし面白くないので。そういうキャラクターを作っていただいて本当にありがたいと思っています。

星野:シナリオ会議では、女性からはただかっこいいよりもギャップがあって母性本能をくすぐられるという評価でした。丸戸さんと矢野さんは『いやぁへたれですよね』って(笑)。男性受けは悪いかもしれませんが、女性としては多分、ひとりの人を思い続けているというのは、女々しさじゃなくてロマンチストという変換があるかと思います。

矢野:想いを断ち切れないことを一途と言い換えることもできるんですが、ヴラッドは、自分の最終的なイメージだと『メンドクサイやつ』なんですよ(笑)。目の前に現れた自分がかつて、今でも想っている人のひ孫という存在をどうとらえていくのか、どう関わっていくのか、いろいろな意味で方針が揺れるんです。最初は『とはいえ別人だから……』と引いてみていたら相手はどんどん踏み込んでくる。それにどう対応すればいいのかと、間違いを犯したりしつつ進んでいく。そこが丸戸さん言うところの人間らしさで、そういう意味で人間らしく悩み、人間らしくめんどくさい。男女がどうこうというよりは、そういう決めきれない部分がヴラッドの一番の特徴なのかなと思ってます。

丸戸:設定的には最強なはずなんですけどね……この性格(笑)。

矢野:能力は最強ですよ(笑)。

星野:そういう弱さみたいなものは吸血鬼キャラとしても新鮮ですし、ありだったと私は思っています。ちなみに私はヴラッドがすごく好きなんですが、ターゲットとして想定していた強い女の人に憧れる女子の方々も、守られたいというよりは守りたい、彼の悲しみをぬぐってあげたいみたいな感じはあるのかもしれないです。

丸戸:そこなんですよ! 強い女子に憧れる女子をターゲットにしたとき、強い女子が好きなキャラクターを配置していいのかという悩みがあったんです。

星野:ヴラッドもちゃんと人気ありますから大丈夫です!

丸戸:よかった……。

矢野:一安心です(笑)。

星野:皆さんが思われているほど、女子は女々しいと思っていないのかと思います。『カッコイイ』の一言に集約されてしまうので、そこに含まれたすべての感情はわからないですが、やっぱり最後にはきちんと決めてくれる、守ってくれているところはありますから。

矢野:やることはちゃんとやりますよね(笑)。

丸戸:もともと最強なんですもの(笑)。

第2回


ルーク・ボーエンについて

森:ルークはひとりでいろいろとしゃべって、説明までしてくれるから楽です。丸戸さんもセリフが書きやすかったんじゃないですか?

丸戸:ルークは自分は強いけれど最強ではないことを自覚しながら、きちんとできることを頑張るような、正しく少年主人公的ないいキャラクターですよね。

矢野:とてもいいヤツですよね。過去にいろいろあったところも含めて、自分でもある程度、いいヤツであろう、いいヤツになろうとしている気がします。苦労もしているから、それが嫌味にならない。

星野:絶対にファンがつく鉄板キャラですよね。カッコよくてちょっとナンパで、いわゆる女子向けに必ず出てくる男子という感じ。男性も癖がないルークのことは好きなんじゃないかなと思います。でも、一番女子が興奮したのは、獣化したときにウルフマン(全身毛だらけ)にならなかったところですね!

丸戸:そこは強い監修が入りましたからね(笑)。どこまで獣にするのかという点についてはいろいろと議論がありました。

矢野:以前、吸血鬼の弱点について中国ではあまり一般的に知られていないという話をしましたけど、同じように狼男の存在もメジャーではないんです。日本のお客さんがなんとなく知っている狼男の特徴や弱点というものが、それほど浸透していないので、そのあたりはあまり触れないで作っています。全身を変身させず、顔を人間のままで獣の耳だけ生やしたのは、ビジュアルとしてどうかという考えからです。

丸戸:最終的に胸毛をどうするか、激しい議論がありました。

星野:胸毛は絶対にないです!(笑)アンブラは人外ですけど、『戦うイケメン』のラインを外してしまってはいけないところがあるんです。視聴者からは1話で変身したときに『こうきたか!』『まさかのケモミミ!』というその辺がかわいいという反応がありましたので、やはり胸毛なしにした判断は間違っていなかったと思っています。

丸戸:獣と人間の耳は共存するのかも問題になりましたね。

森:ルークがスマホを使うときに、よく間違えていました。何カットか人間の耳の方にスマホをあてて描いてあって、ハンズフリーの状態に修正しています。

丸戸:耳がどこにあるかを考えさせちゃいけない(笑)。

第3回


寡黙なトウリュウ

森:トウリュウは表情がほとんど見えなくて、セリフも喜怒哀楽をそれほど出すタイプではないので、作画的には(笑)楽だろうと思っていたんですが、顔に出ないのもそれはそれで難しかったですね。楽でもあり難しくもありでした。

矢野:中国でイメージがわきやすい「アンブラ」として、キョンシーを持ってきています。もっとわかりやすく言うと、トワイライツの最初の配置は『怪物くん』なので、フランケンと吸血鬼と狼男、フランケンの部分をキョンシーに差し替えたのがスタート地点です。

星野:カッコいいキョンシーが出てきて、ガトリングぶっ放すっていうのがビックリでした。

矢野:ヴラッドとルークが接近戦型だったので、後ろからとにかく弾をバリバリ撃つ感じにしようと。袖からなんでも取り出す仙人のイメージから、それなら銃を取り出せばいいじゃないと。

丸戸:ガンタンク的な役割ですね(笑)。

矢野:トウリュウは声が印象的でしたね。まずトウリュウのキャラ造形で杉田さんにしようというのが意外でしたし、やっていただいたらすごく面白く仕上がっていました。

ヘイシンの過去

丸戸:ヘイシンはリージャンと同じ家の出で、トンの実家は彼に滅ぼされてます。

矢野:リージャンの旦那さんの兄貴がヘイシンです。リージャンは結婚で入ってきたわけですが、同じ一族になります。

丸戸:で、トウリュウを作ったのがヘイシン。

森:第4話の冒頭はリージャンの住んでいた家ですよね。ヘイシンがトウリュウをけしかけて襲わせたってことですか。

矢野:襲わせたのか、ヘイシンがなにかやっているのを見抜いて暴走したのかというところですね。

丸戸:そういう形で滅ぼされて、リージャンがいなくなっていたので、一族で生き残ったのはリージャンの息子――トンのおじいちゃんだけになってしまったんですが、資産はあったので保護されて育って、家はちゃんと続いたんです。この辺の歴史がいろいろと捻じ曲がって伝えられたせいで、逃げ出したリージャンは悪いヤツだと自分の母親を憎んでいた。トンが持っていたリージャンからの手紙は、本当はおじいちゃんに届いたもので、見もせずに、捨てるには忍びないのでしまいこまれていたものなんです。それをトンが見つけて読んだ。トンにとって、リージャンは憧れの曾おばあちゃんなんだけど、家ではそんなことひとことも言えない状況だったんですね。

矢野:あの時代にロンドンに行って活躍していたというだけで、憧れの対象にはなりえますからね。

丸戸:だけど、曾おばあちゃんはどういう人だったのって聞くと、親にはすごく渋い顔をされる。それで余計にいろいろと想像を膨らませていたところもあるのかと思います。

星野:でも、ヘイシンが家を滅ぼしたのってなんでなんでしょう。

丸戸:修行をこじらせたとでもいうんでしょうか。

矢野:すごく単純な話で、不老不死に行き着きたかったんだけど、その道筋をこじらせてしまったのが大きいと思いますね。

丸戸:術者の家系だったんですよ。そして、もしかしたらリージャンという、自分よりもすごいかもしれない人が現れたことへの焦燥感もあったのかもしれないです。

矢野:追い越されるかもしれないものを見てしまって、ねじ曲がってしまったと。

丸戸:自分は術者としてどう生きるべきかという部分から、とにかく自分だけで生きていけばいいんじゃないかと思ってしまったのかもしれないですね。リージャンが引き金になっているともいえるでしょう。

第4回


普段のトウリュウはどんな感じ?

丸戸:カフェでは黙々と掃除していそうですね。

矢野:基本的に無駄な会話をしないし、なにかあればすぐ来てくれると思います。

森:カフェのお客さんもいやすいと思いますよ、うるさい店員じゃないので。

丸戸:きっと、ヴラッドとルークが言い争いをしたときに、どちらが正しいか裁定を下す役(笑)、そんな感じになりそうです。

矢野:OPではウェインのお世話をしていますけど、あまりコンビ感はないですよね。

森:12話で『ワガママはよしなさい』とウェインをたしなめるシーンがありますが、いつもそういう関係だったというよりも、最終的にあの関係になったということですね。

丸戸:トウリュウは誰に対してもお世話係的なところ、執事感がありますからね。

矢野:普段から無茶振りもされたりしているので、慣れているんじゃないでしょうか。

森:8話でトンの髪を梳いてましたが、リージャンにもしていたんでしょうね。

星野:冷静に考えると、割とこき使われてる感じもありますよね(笑)。

丸戸:リージャンは家事ができたんでしょうかね? トンは何もできないけれど、リージャンは結婚して子供も育てている、一応、家庭に入っているわけですし。

矢野:昔から大きな家だったことを考えると、お手伝いさん的な人たちは雇っていたでしょうね。とはいえ、彼女の行動力を考えると、今のトンよりはできたんじゃないでしょうか(笑)。

星野:ある意味、お世話され慣れている家系なんですね。

第5回


ルークとヴラッドはいいコンビ?

丸戸:はぐれものの狼であるルークと、人嫌いの吸血鬼ヴラッドですから、絶対に反目し合っていたでしょうね。

矢野:けっこうケンカしていたはずです。出会った当時、トウリュウはいましたがリージャンはいないので、ヴラッドを止める人間もいませんし。

丸戸:当時は今よりももっとトゲトゲしい感じのケンカをしていたのかと。

矢野:ペペロンチーノを作るくだりも、きっとそのころに比べたらかわいい嫌がらせ程度なんですよ(笑)。ニンニクが吸血鬼の弱点というネタはわからなくてもいい前提で投げているボールですが。

丸戸:紅茶の香りと合うわけがないですからね。しかしルーク、間違いなく魂はイタリア人ですよね。シャツは胸の半ばまではだけてそうですし、胸毛があってもいいんじゃないかって思って……(笑)。

星野:ダメです! 胸毛のないイタリア人もいます!(笑)

森:そもそも作画が厳しいのでナシで……(笑)。

星野:でも、確かにルークは出すものすべてイタリアンですよね?

矢野:単純に、イタリア料理がおいしかったんだと思います。おそらくクリスと仲たがいしたり群れからはぐれる前に、人間の料理に感動することがあって、もっと人間に近づこうとした結果、里がヒドイ目にあってしまうという流れです。

第6回


とにかく強い、トンというキャラクター

丸戸:最強であるヴラッドに対して『私に勝てると思っているの?』くらいのことを言いますからね、トン。

矢野:トンは想像通りに動いてくれましたね。もともと、企画を始めたときにこういう主人公像がいいというHappy Elementsさんからのオーダーがあってできあがったキャラクターなので、話の中でどう変わっていったかはともかく、芯の部分は丸戸さんに肉付けしていただいたイメージ通りで、違和感なくストレートに受け取れました。

丸戸:女性が憧れる女性として、強いキャラクターを書いていたんですが、書いていく間も私が考えて私がこう決めるという形、受け身になることがないようにと、Happy Elementsさんからは再三チェックをいただきました。ちゃんと女性受けしてましたか?

星野:いわゆる女性向け作品よりも強い主人公ということで、半々ではありますが、思った以上に受け入れられてます。視野に入れていた中国ではもちろん受け入れられているんですが、日本でもカッコイイとか、トンとシンヤオみたいなカップルはいいっていう反応もあります。

丸戸:僕の作品のファンが見ると、『やっぱり丸戸の主人公はウザいな』っていう感想があるみたいなんですが、僕自身はそういうつもりで書いたんじゃない!って(笑)。今までの色をすべて捨てて、ちゃんと指示通りに市場に受け入れられるために書いたつもりが……(笑)。

星野:そういう意味では、強い女性が書ける人に発注したという判断が間違っていなかったとも(笑)。これは勝手な思い込みかもしれないですけど、丸戸さんだからこんなに意志が強くてアクティブに動く、男ともラブやラブコメにはならないというんでしょうか、そんな対等な関係として立てるキャラクターが書けたのかなとも思います。

森:女性だから弱いというのは日本のアニメに多い表現ですが、このくらい強くて普通なんですという部分はありますね。私がそういう考え方の監督の作品に参加することが多かったせいもありますけど、女がか弱いものだと思ってくれるなと再三言われていたので、トンのようなキャラクターは、やり慣れていたかもしれません。絵的な面では、(日本の定番である)描きなれた弱い表情で原画があがってくることが多かったんですが、『トンは本当に強いキャラなのでこんな顔はしません』という形で、ほとんど修正を入れました。シンヤオは逆に放っておいたんですが、本当は彼女もそんなに弱いキャラクターではないので、直す部分もありました

星野:ファンの方々の反応を分析していると、もちろん男性キャラクターへのコメントが圧倒的に多いんです。でも、トンに対してネガティブだったら、なにかしら反応があるじゃないですか。それが普通に受け入れられていて、その中にチラチラと、女の子でもトンのファンがいるんです。『カッコイイ、憧れる、トンのキャラクターグッズはなんであまり出ていないの』というような反応もある。日本でも心配したほど、見ている方の中で違和感はなかったんだと思います。

第7回


変化の激しかったウェイン・キング

矢野:最初の設定からは、ウェインが一番変わりましたね。端から端まで変わったと言ってもいいくらい。

丸戸:最初はジキルとハイドだったんです。謎の行方不明の少年なんだけど、本当は入院しているという設定で。

矢野:生霊的なイメージですね。

丸戸:お父さんが敵側の科学者で、その実験でハイドになるという話があったんですが、途中で全部変えました。

矢野:敵組織に科学者の存在がはまりにくかったのと、キャラクターが多かったこと、さまざまな要素があって変わった感じですね。ネットワークが得意という設定が最後まで残っています。

丸戸:ワイアードゴーストみたいなイメージですね。

矢野:今の時代でゴーストと言ったときに、単純に幽霊というよりも、能力的に電子の世界に潜れるといいだろうと、憑依能力でネットワーク機器に次々と入っていけばハッキングもできるという形でスタートしています。

丸戸:最初の設定では人形には憑依できず、ロボット――コンピュータ、CPUのあるモノになら憑依できたんです。ルンバやカーナビはOK(笑)。

矢野:アナログなものには憑依できないところがスタートだったんですよね。

丸戸:それでも二重人格は残したかった。そのために記憶喪失と正体不明の二元体制にして、記憶を失っている理由は元ネタが強すぎてわざと記憶を消して隠れているという形にしたらどうだろうと。とにかくショタっぽいキャラが、いきなり態度悪くなるというシチュエーションがやりたかったところがあります。

星野:そういえば普段にぎやかなウェインが1話では静かにしてましたよね。

丸戸:1話でキャラクターを全員出してしまうのは整理が追い付かないという判断はありました(笑)。

星野:『せっかくみんなの力になれればって思って、目覚めたのになぁ』ってセリフがあったので、寝てたのかなあと思ってました(笑)。

森:みんながハイドパークに出て行ったとき、トンがひとりだけ残ってしまって、結局、店を出ていくじゃないですか。あのシーンで他人の店にひとりで残されたのに、外に出ていけないなと思って付けたしたのが、ルークの『大丈夫、もうひとりいる』というセリフで、それを言ってくれればトンも出ていけるなと。つまり、ウェインは留守番していたんです(笑)。

矢野:実は第1話ではほとんどカフェにいないんですよね。最初にトンが迷い込んだときだけですから、そういう意味ではたまたま寝ていたのか、お客さん相手だからいちいち反応しなかったのかというところですね。

丸戸:ウェインはヴラッドが拾ってきたんです。そもそもトワイライツはアンブラの駆け込み寺的な存在なので、そういうことがよくあります。

矢野:なにかしらの事件があってそうなったんですが、最初は今のものとは違う人形に憑依していました。続編を作れるのならば言及したいところなんですが、事件に関わったことで、ヴラッドはウェインの正体を知っています。その事件の結果、ウェインを連れてくることになったという感じだと思います。ルークもトウリュウも、ヴラッドが連れてきたのであまり深く追求していないですが、何か事情があることは察しています。

星野:ウェインの二重人格的な『ギャップ』は、私の中では2段階あるんですよね。まず見た目のかわいらしさに反して、小悪魔的で飄々としているギャップがひとつ。そこで終わりだと思っていたら、人格がまるごと変わって小悪魔的ではなく悪魔的になってしまうようなギャップが待っていて、ウェインはただのかわいい男の子を凌駕しているなと。キャスト的には山下さんがはまり役的に演じられていて、悪魔になったときにはドSな声まで聞かせてくれる。その声がまたフォルムとマッチしているので、魂を持っていかれる女子は間違いなくいますよ。悪魔から普通の人格に戻った後にギャグっぽく『どうやら僕は人類を滅ぼさずに済んだみたいだ……』とセリフを言うのも、余韻的なモノが残っているのかなと。今後のウェインの活躍への期待値があがってくる部分があって、いつまた悪魔になるんだろうと待ってしまうんですよね。第7話のラストですっかり持っていかれた人は多かったようです。かわいいフォルムが好きな女の子が『え? そんな、守られちゃう……』みたいなシチュエーションはあまりないので、すごくよかったなあと思います。そういう意味では、最終回に向かうに従って『推しがわからなくなってきた』『選べない』という声は増えていた気がします。

丸戸:最終的にはヘルシングさんですよ!

星野:残念ながらその声はまったくないですね(笑)。

第8回


バックアップとヴァン・ヘルシング

丸戸:バックアップはヘルシングがなぜ強いかというネタばらしとして生まれたキャラクターです。なぜ人間であるヘルシングがアンブラと対等に戦えるのかというと、裏で支えているキャラクターがいたからなんですよ。最終的にヘルシングは本当に人間離れしてはいるんですが(笑)、最強のバックアップキャラクターがいるからだという意味を込めてコードネームをつけています。でも、だいたいそういうヤツは裏切るよねと。すごいですよね、顔が出た瞬間に裏切ってますから(笑)。彼はあくまでもヘルシングの私兵なんです。コミックに出てくる12代目のヘルシングはこんなことしていませんし。

矢野:3年くらい前に今のヘルシングに代替わりしたのですが、彼がミッドナイトサンを立て直したときに、アンブラへの対抗策として作ったのが彼のチームであり、そのトップに据えたのがバックアップなんです。決して組織として受け継がれてきた形ではない。ミッドナイトサン自体は、人間にできるいろいろな形でアンブラとどう戦うかを続けてきた組織なんです。

森:表の世界でスノウマリーの社員として頑張っていたのを、バックアップとして裏の世界にも引っ張ってきたという感じですね。

丸戸:クラッカーだった彼をヘルシングが引き抜き、スノウマリーという会社を立ててIT長者になって、その資金と名前を盾にミッドナイトサンに食い込んでロンドンを任されるようになったという流れです。そう考えると、全部バックアップの功績なんですよ(笑)。

矢野:ヘルシングに社長としての能力はもちろんあるんですけどね。

丸戸:そうやってプロデューサー気取りでバックアップの上前をはねてきたから、裏切られる羽目になったんですね。自分が表に出て全部私がやった私が作った、私がボスだ、今ではミッドナイトサンのロンドン支部のトップに上り詰めたなんて言ってたら、バックアップからしたら面白くない。

矢野:スノウマリーの魔法の鏡の開発者インタビューには、ヘルシングが映ってますからね(笑)。

丸戸:バックアップは完全にゴーストライターで、囲われてしまっているので身動きが取れない。最初は金を渡されて好きにツールを開発していて楽しかったんでしょうけど、ヘルシングを見て、本来はあそこに自分がいるべきだと思うようになったから、最終的に自分がコントロールになる、ミッドナイトサンのトップになって有名になるという思考になったわけです。

矢野:ずっと正当に評価されてないと感じていたんでしょうね。

丸戸:バックアップには名誉欲、出世欲だけがあるんですが、ヘルシングは純粋な正義の味方なんです。そこが想いとして違う部分で、ヘルシングは本当に純粋に人類のためと思ってやっているんだけど、そういう超人を俗人であるバックアップが見て、とって代わりたい、とって代わるべきだと考えたからこういう関係性になったんでしょう。自分で企業を起こしてなにかを作るような才は、バックアップにはなかったんですよ。一方でヘルシングは客観的に見ればバックアップに対してヒドイことをしてますが、彼の中ではすべて正義のためなので、名誉や出世のような細かいことはどうでもいい。

矢野:一番タチの悪い経営者ではあります。自分の中の正義、正しいことのためにやっているので、誰に何を強いていようが、正しいんだからいいじゃないかと言ってしまう。

丸戸:やりがい搾取ですね(笑)。自分の目的とみんなが一緒の方向を向いていると信じているので怖いし強い。

矢野:だんだん描写がコミカルになっていったのは、丸戸さんが彼を好きになっていったせいだと思いますが(笑)、言ってることは最初から『アンブラから人を守る』だけで、一貫しているんです。

丸戸:コミカルになったのは8話の描写のせいもあるんですよ。病院の中でのたうちまわっていたり、逃げ出したりするあたりですね。僕が書いたわけじゃないんですけど(笑)なんだかそうなってしまいました。

第9回


クリスの遍歴とムー・シンヤオとの約束

矢野:里が滅ぼされたあと、クリスはずっと仇討ちの機会を狙っていたと思います。最初は人間を憎んでいたんですが、アンブラの仕業だとわかって、じゃあ誰がと探っていく中でルークが浮かび上がってきたという流れで今に至っている。ミッドナイトサンにヘイシンをつてに入ったのは、ヘイシンがいろいろな意味で利用した側面が強いですね。クリスがルークにたどり着くかつかないかのところで、ヘイシンがうまいこと引きこんだんじゃないでしょうか。

星野:そういえばシンヤンとの約束、マーケットには一緒に行ったんでしょうか。

森:行ってないんじゃないですかね。たぶん、約束も忘れて自分探しの旅に行っちゃったんじゃないかなと。

星野:そんな、ひどい! そんなことないですよ!!(笑)

森:そんな男ばっかりですよ。いちいち女との約束を守るばかりでは、あまり魅力もないし、そのくらいの方がいい。

星野:そんなことないですよ、クリスは世界一素敵なプレゼントを探してきて、帰ってきたら一緒にカムデンマーケットへデートに行くんですよ。

森:帰ってきてからもシンヤオにまた言われてようやく思い出すくらいであってほしいね、俺は。それくらいいい加減でいてほしい(笑)。

星野:クリスは言ったフラグは回収しますよ!(笑) クリスには不器用ながらも律義で、一途であってほしいです。

丸戸:旅に出るなんていう常套句で逃げなきゃよかったんですよ(笑)。

矢野:どうしていいかわからなくて逃げ出したっていう風にも見えますからね。

星野:もしかしたら、まだ自分がシンヤオを守れる器じゃないと思っていったのかもしれないですよ!

矢野:それが逃げですよ!(笑)

丸戸:という具合に妄想して、ユーザーの方に楽しんでいただければありがたいですね(笑)。

星野:すぐじゃなくても私は待ちます(笑)。

トウリュウとヘイシン

矢野:ヘイシンはトウリュウを作って使い捨てているので、執着みたいなものは持っていないですね。

丸戸:使い捨てられたところを、リージャンが拾った形になります。ヘイシンにとっては、自分が使い捨てたはずのものがまだいたから、じゃあ利用してやろうくらいの感じです。昔はもっとドロドロしたものを抱えていて、トウリュウのような兵器を作って第一次大戦でいろいろやってやろうという想いもあったんですけれど、今は最終的にとにかく自分だけ高みに上ればいいという、仙人みたいに落ち着いちゃったんです。

矢野:リージャンがいなくなってしまったことも影響していると思います。

丸戸:彼は最終的にアンブラになりたいんですよ。人間の身でありながら、ありえない長生きをしていますが、不老不死を得たわけではないので、完全になりたいんですね。

矢野:世界をひっくり返したいわけではなく、自分の命をどう長らえていくかを目標に活動しているので、ミッドナイトサンにいますけど、組織に協力する気はさらさらないですし、そういう意味ではキョンシーをわざわざ作る必要も感じていない。ミッドナイトサン内での序列にも興味はないから今の位置にいるところはありますね。

森:アンブラ兵みたいなものを作るのは、必要あればという感じですね。

第10回


ヴラッドの私生活は?

森:劇中でヴラッドだけは私室が出てきますよね。

矢野:もともと、あのビルはヴラッドのものだったんですよ。

丸戸:今はない設定ですが、最初、ヴラッドは金持ちだったんですよ。この辺のビルのオーナーで、トワイライツの設立資金も出している。最初は紅茶栽培で大儲けしていたとか。

矢野:あと株とか(笑)。今は金持ちかどうかわからない、それについては語られなくなったというところですね。

星野:でも、あれだけ無精だと、カフェが休みの日にご飯を自分で作ってたりするのか、気になるところですね。

矢野:吸血鬼なので、ものを食べなくても生きていけるんです(笑)。

丸戸:基本的にひきこもっていてもどうにかなっちゃっうんですよ。

星野:そうだった!(笑) でもアフタヌーンティーパーティ、すごく張り切ってましたよね。

丸戸:本来は静かな午後を楽しむためのものなのですが、あのシーンは決戦前でもありつつ、イギリス人のこだわりみたいなものを出したかったので、わがままを言ってこだわらせていただきました。作る側として、私自身も実際にロンドンの老舗でその体験をしてきましたし、フィードバックしたいのもありました。あれ、下から順に食べていくんですが、基本的に食べ放題おかわりし放題なんですよ。紅茶も同じものならおかわりし放題、いくらでも盛り上がれますよ!(笑)

星野:何時間でもいられそうですね。

丸戸:下からサンドイッチ、スコーン、ケーキの順におかれているんですが、上の段にいってしまうと、下の段のおかわりはできなくなるんです。ここが戦略(笑)の必要なところで、サンドイッチを食べてスコーンにいくと、もうサンドイッチがこなくなるから、どのくらい食べるかの判断を迫られまして、そんなことをやっていると逆に最後のケーキにたどり着くころにはもうすっかりおなか一杯になっていて食べられないとか(笑)。

矢野:そもそも、アフタヌーンティーって出てきたものを食べるだけでも十分おなか一杯になっちゃいますからね。静かな午後って、あなたたちはどれだけ食べるんですかというところはありますよ。お茶の時間の長さたるや(笑)。

星野:実は本編でみんなそろって和気あいあいとする瞬間、あまりないので印象的でした。

矢野:全員そろっては、あのシーンが最初で最後かもしれませんね。

森:ただ、アニメで食べるシーンを描くのは、大変なんですよ。ヘイシンは中華料理食べてるし、カフェでパスタは出すし、もう一度言っておきますが、大変なんです(笑)。

丸戸:中華料理は皿がたくさんなくちゃ! 脚本だと一行『たくさんの料理』と書くだけですからね(笑)。見ている方も超人の戦闘シーンと言われたら、本当に見たことがあるわけではないからわからないですけど、食べ物のシーンはわかるから、けっこうつっこまれやすくて大変なんですよね。

お気に入りのキャラクター

森:監督という立場上難しいのですが、グレゴリーです。スピンオフでロンドン刑事モノを作っていただけると面白そうです。

丸戸:『ロンドン市警アンブラ課』みたいな、ひとりしかいない部署で狭い部屋で頑張ったりしてそうです(笑)。

星野:コミックではルークとの関係が描かれているので、そこを深掘りするとさらに妄想が膨らみそうですね。オリジナル作品で12話となると本当に描けないことが多すぎて!

矢野:メインキャラの中だとルークが好きですね。クリスとの掛け合いが面白かったのもあります。脚本の段階でももちろんですが、収録で声がついたことが大きくて、岡本さんのルークみたいなちょっと軽い感じの声は珍しいなと思っていて、そこでクリスの小野さんと掛け合いを始めたとき、個人的にベクトルは似ているけど性質が違うと感じているふたりの声で、すごく兄弟感が出ていて、とてもよかったんです。演技の方向性をお互いにちょっとずつ似せてられたのかと思いますが、『似てるなこいつら』というのが話し方ひとつで伝わってきた。画面で見ても兄弟だなこいつらと思う一方で見かけは全然違うところがとてもよかったです。


星野:私は決められないです……(笑)。男性メンバーももちろんカッコよくて、回ごとに推しが変わっていくんですけど、最終回に向けて、トンが自分で責任を負って決めて、自らどんどん道を切り開いていくところは、女子としてすごくいいなあと思っています。ルークに『お嬢ちゃんの親友は助けてみせる』と言われたときも、『シンヤオを助けるのは私の特権よ?』って言えてしまう。『シンヤオよりも今は街を救わないと彼女に顔向けできない』っていうところもそうで、自ら責任を負う姿はすごくいいですよね。

第11回


ケンカするほど仲がいい――ルーク・ボーエンとクリス・ボーエン

森:弟のクリス・ボーエンはファッションから考えると、韓国にいたことがあるんじゃないですかね?

丸戸:韓流スター!(笑)

星野:ファッションについてはこちらからリクエストした部分がありまして、最初は日本のオシャレ男子のファッションを考えていたんですが、それだと少し線が細くなってしまうんです。もう一回り肉感的と言いますか、筋肉がそこそこついているけど、がっちりしすぎないラインを目指したかったので、二の腕の筋肉が見えるノースリーブ……みたいなところから、K-POPのラインでいこうと。体型によってあうファッションあわないファッションもありますからね。

星野:そういえば、最後にクリスが世界へ旅に出るじゃないですか。あれはルークの真似をしたんですか?

丸戸:そこはわかりません(笑)。

矢野:特に世界をめぐる理由はないですけど、実際のところはわからないですね。

森:あのままカフェに残っても違和感ありますしね、一緒になにをする風もないので、クリスは旅に出るのがいいと思います。

丸戸:ときおりカフェにふらっと現れるといいですよね。

星野:でもあのふたりの関係性は、女子目線ではとても理想的です!

丸戸:兄弟の掛け合いは、本当にいろいろ入れたかったんですが……。尺を超えたときに、どこを削るかとなると、だいたいこのふたりのやり取りになってしまうんです。

星野:そうなんですよ。『これは入れていただきたい!』というやり取りもどんどん削られてしまって(笑)。

丸戸:というのは、ほかの人たちがストーリーに絡む会話をしている中で、無駄口しか叩いていないからなんです。このふたりの味は無駄口ですからね(笑)。

星野:個人の見解ですが、世界中の女の子は全員、ケンカしている兄弟が反発しあいながら仲良くなるのは大好物なんですよ! 12話で一緒に戦うシーンがもう、ようやくひとつになって、背中を預けあうのが最高で。しかも普通だったら力を合わせてやろうぜってところを、丸戸さんは『オレが先だ』『オレがやる』って、競い合うように共闘させていて、女子の中では、ホントはお互いのことを思ってるんじゃないのって勝手にスキマを読みながらも、ルークとクリスらしさがあってよかったなあと思います。

丸戸:最終回以外にも、第7話あたりは会話シーンがばっさりカットされましたよね。

星野:ルークがクリスを連れ出した後に、クリスに殴られるシーンですね。

丸戸:本当はその場所にいたらルークが危険だったので、殴ってぶっ飛ばしたんです。で『危なかったな』って。対してルークが『ああ、ありがとよ』って足払いをかけて、クリスをすっ転ばせたらそこに敵が現れる。お互いをちゃんと助けてるんですが、ぶん殴ったり蹴飛ばしたりという乱暴なやり方で、そのあと『テメェなにしやがる!』って結局ケンカになるシーンがありました。実現したらきっと楽しいんですけど、それには何秒必要なの?という(笑)。

森:そうなんです、尺もかかるし、アクションも大変(笑)。

矢野:一応、最初の部分だけ残った形ですね。

星野:そういうやり取りがあったことを知っていただけると、さらに妄想がはかどるんですよ!

シンヤオとトンの仲良し感

森:第1話のトンとシンヤオ、電車の中で恋人つなぎをするのはどこから出てきたんですかね。

星野:あれも中国の友だち文化です。

矢野:どのくらいまでスキンシップを取っていいのかという議題があって、中国スタッフにデータをいただきました。

丸戸:日本人の女性同士よりはイチャイチャする、スキンシップが普通ということだったんですが、実際どこまでやっていいかというヒアリングがあったんです。

星野:日本だとくっつきすぎと感じるでしょうが、あれくらいやると、中国でもすごく仲がいいということが伝わるんですよ。トンが命を賭けちゃうのもわかる感じですね。

丸戸:そんなシンヤオがラスボスになるなんて、最初は思ってもいなかった……。

矢野:敵になるというファクターだけは最初からありましたけど、あれほどの強敵になるとは決まっていなかった。

丸戸:最初に構成を組んだとき、シンヤオがこんなに重要になる予定はなかったんです。トンとカフェのメンバーだけではなくて、シンヤオとの関係性をもう少し描きたいという話が出てきたので、それには敵にまわるくらいの話が必要なのかなと。最初に誘拐されてから、本当にいつまでたっても合流できない(笑)。

星野:視聴者ターゲットの中には、親友という存在に命を懸けられる、救うという行動に出られる――そこまで大事にできる親友を持てることに憧れを持つ層もけっこういるんです。同じ価値観を共有できる相手があまりいない中で、それだけふたりがシンクロして、彼女のためなら自分は何をしても頑張って救うんだと言って行動できることに憧れる。シンヤオがなかなか合流できない理由はそういうところにもあって、だからこそ最後にはトンがシンヤオを救うことが一番大事になる。絶対に他の誰か、クリスに連れて帰ってきてもらったりしてはいけないんですよ。


バックアップとの関係

森:バックアップとヘイシンは、ある一点で同じ目的があったので一緒に行動していただけで、普段は仲悪いくらいの関係だと思います。

矢野:お互いにゲーム相手なんですよね。ふたりとも他人をおもちゃにすることにためらいがないですし、そこでゲーム相手という形で成立した関係なんです。ゲームを守るためなら協力するけれど、決してそれ以外の目的のために力を合わせることはない。バックアップがゲーム盤を作り上げて、ヘイシンを引きずり込んだ形です。

森:だから11話でバックアップが死んだときに、ヘイシンの反応を切り取ったりしていないんです。

第12回


家事は苦手? 中国の実情から導き出された個性

丸戸:トンは料理が苦手という描写がありましたが、そもそも、中国から留学するような人たちは子供のころからずっと勉強しかしていない、ずっと努力して、その省のトップになるような、そのくらいのレベルの人たちらしいんですよ。だから普通、料理なんてしないというのが、中国のいわゆるできる人たちの常識に照らし合わせた結果なんです。身の周りのことはしないし、親もそんなことしている暇があったら勉強しろとやらせない。

矢野:特にトンはいい家系、成功している家のお嬢さまなので、そういった意味でも身の周りのことは別の人にやらせていると思いますので、家事全般は得意ではないのかなあと思っています。

森:包帯のしばり方も微妙でしたからね。

矢野:見てわかるくらいには下手。お世話され慣れてるところがあるくらいには箱入りで、それが嫌で独立して暮らしたくて留学してきたという流れもあります。

丸戸:ですので、家事が下手というのはギャップのあるキャラクター付けでは決してなくて、そもそも中国で成功している女性タイプに基づいたロジックでつけられたキャラクター性なんです。

矢野:脚本作りの上でも、中国スタッフからたぶんこうはならないという指摘をいただくこともあって、調整したり変更した部分もありました。

丸戸:シンヤオを守ろうとするところなんかは、親分肌な部分かなあと思いますね。

星野:もし、日常的なストーリーとして、トンがカフェフォービドゥンの店長をやっていたとしたら、どんな風な日常を送ったんでしょうかね。

森:もっと平和なアニメになって、僕は楽ができたでしょうね(笑)。

丸戸:僕が最初に書いたプロットはそっちだったんですよ(笑)。

矢野:アクションや戦闘が入るプロットは僕です(笑)。

星野:矢野さんのせいというわけではないですが(笑)、中国市場での女性向けという視野で考えたときに、市場としてバトルやミステリーが好きという志向もあるんです。なので現在の形になったんですが、特に監督にとっては女子向けと聞いたのにむしろ少年向けのようで、発注が間違ってない?と思われたかもしれないです。

森:今までアクションものも多く作ってきたので結果的にはよかったんですけど、大変ではありました(笑)。日常のお芝居も難しいんですけどね。

丸戸:ともあれ、トンは基本的に何もできない店長ですよね……(笑)。

矢野:もちろん、今でも何かできているわけではないですからね。

森:お金の計算はできるんじゃないかな。あと、宣伝広告はうまそう。

丸戸:結局、素人が店長になって、最初は店員たちと反目しながらだんだん成長していく、ほのぼのしたいい話になったんじゃないかなとは思います。

星野:親分肌な性格と優秀な能力がかみ合えば、マネジメントする人間として優秀になれる気もしますけど。

丸戸:でも、ヴラッドあたりにはだったらお前は紅茶をいれられるのかと言われておしまいになっちゃう(笑)。

星野:できることが少なすぎるんですね(笑)。でもきっと、みんなの心の支えになるんじゃないかなあ。

矢野:お店を盛り上げようとはするでしょうね。ルークもヴラッドもトウリュウもウェインも、あのカフェを今以上に盛り上げようという気はさらさらないわけです。でもトンは、できないながらに盛り上げようという意志と行動力はありそうですから。

丸戸:で、みんなに俺たちアンブラなんだけど、目立ったら困る……とつっこまれる。

森:最後、リージャンに名刺を出しますよね。あれはきっとトンのアイデアですよ。ほかにもラストの方でロンドンバスに広告を入れておいたんですが、あれもトンが言いだしたんだと思っています。やめろってみんなに言われたのに、広告は出した方がいいって言い張って、ああなっているんだと思います。ネタバレでした(笑)。

丸戸:勝手にやってますよね絶対(笑)。

矢野:少なくともヴラッドは『よけいなことしやがって』と言ってるでしょうね(笑)。

星野:そういえば、迷子の女の子を警察に連れていかずにカフェフォービドゥンに行けばどうにかしてくれるって紹介しちゃってましたね。トン、自分から進んで面倒ごとを拾ってくるところはありそうです。

ファンの方々へのありがとう

森:12本のシリーズの割には綿密な設定作り、キャラクター作りができているので、12本だけでは少しもったいないところがあります。続きがあったらやってみたいし、楽しい話をもっと作れるんだろうなと。第5話みたいな1本で独立した話もできるし、リージャンの話も作れるだろうし、余地はあると思いますので、できたらまたやりたいですね。皆さんの声援があれば実現するかもしれませんので。

矢野:ウェインとの出会いの話やリージャンの話など、まだまだ語れることはあるので、機会があればやっていきたいと思います。自分がやっている範囲ですと、コミックで第二期としてアニメのあとの時間軸のお話をやっています。そちらを見ていただければ、ちょっと別の『ファントワ』が見られると思います。コミックにもヴラッド、ルーク、トウリュウ、ウェインの4人は出てきますので、もし12話じゃ足りないよ!という方は見ていただきつつ、続編を楽しみにしていただければとうれしいです。

丸戸:最終話まで見てくださった方々、まずは本当にありがとうございました。せっかく最後まで付き合ってくださった方々には、この作品をどう感じたのか、すごく教えてほしいです。今回、違うジャンルでのチャレンジだったので、いろいろフィードバックして勉強して成長したいという想いもあります。よかったところだけでなく、ここをこうすればもうちょっとよくなったのにというところも教えていただければ、これからもっといいものが作れるかもしれません。私の成長のためにも(笑)ぜひ感想をいただけたらうれしいです。どうもありがとうございました。

星野:今回、アニメプロデューサーを初めてやらせていただいて、右も左もわからない中、こんな豪華な皆さんと一緒に、しかも日本のアニメというより中国、世界を目指すアニメに携われたことがとても刺激的で面白かったなと思います。日本のみなさんにも楽しめるし、中国のみなさんにも世界のみなさんにも楽しめる作品になっていると思いますので、引き続きみなさんのご声援があれば、アニメは大変なんですがやってみたいなと思っています。コミックも連載中ですので、ぜひご覧くださいね!

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